Exhibition Overview
木下令子の絵画は、日光による印画紙の感光、紙の日焼け、皺や折目など不可逆的な 現象を持つ支持体に対し、それらの痕跡の上にスプレーガンから拡散される霧状の アクリル絵の具を吹き付け、加筆する行為により制作されます。記憶と記録のあわい を見つめ、移ろう時間に介入し、生きる上での些末な出来事の痕跡、密やかな憂いや 愛しさをすくいとる喜びは木下の創造性の原点と言えるでしょう。画面に定着された 無数の粒子は、そのリアルな質量によって時の手触りを顕にします。テーブルの上の 葡萄に手を伸ばし、その一粒に触れる瞬間のような瑞々しさと、同時に、触れた瞬間に 砂粒のように流れ、変化し、捉えどころなく霧散するような虚無感。それは時という ものの本質を眺める体感です。
当ギャラリーで3 回目の個展となる本展では、2014 年から現在まで、約10 年間に制作 された未発表を含む旧作から、新作までを包括的に展覧します。バリエーションに 富んだ支持体、テーマへのアプローチの数々から、個々の地点での表現と、全体から 立ち現れる木下の眼差しを感じることができるでしょう。
会場
KiKi Gallery
休廊日 / 水曜・木曜